2024/10/15

波長222nm遠紫外線照射の、歯周病菌の殺菌並びに歯周病菌が形成するバイオフィルムの破壊への有効性を確認

ウシオ電機株式会社(本社:東京都、代表取締役社長 朝日 崇文、以下 ウシオ)と共同研究をしている山口大学大学院医学系研究科 基礎検査学講座の西川 潤 教授と、消化器内科学講座、臨床検査・腫瘍学講座、歯科口腔外科学講座のグループは、波長222nmの遠紫外線が歯周病の殺菌並びに歯周病菌が形成するバイオフィルムの破壊に有効であると報告しました。なお、本研究成果は、2024年8月8日付で「J Microbiol Immunol Infect」に掲載されました。

【発表のポイント】
•波長222nmの遠紫外線照射が、歯周病菌の殺菌並びにバイオフィルムの破壊に有効であることを示しました。
•歯周病菌の殺菌に有効なエネルギーの10倍量の遠紫外線をマウスの舌に照射しても異常は認められず、安全性が確認されました。
•本研究の成果により、遠紫外線歯周病治療器の開発が促進されることが期待されます。

【概要】
有害な紫外線が除去された波長222nmの遠紫外線は、様々な細菌に対して殺菌効果を持つ一方で、人体への安全性は高いため、大変注目されています。波長222nmの遠紫外線を歯周病菌に照射したところ、人体へは悪影響を与えないエネルギーで殺菌が可能でした。また波長222nmの遠紫外線は、歯周病を治りにくくしている歯周病菌と菌体外物質から構成されるバイオフィルムを破壊する効果もありました。下図(図1)は、歯周病菌にバイオフィルムを形成させ、波長222nmの遠紫外線を照射前後のバイオフォルムの状態を観察したものです。上段の共焦点レーザー顕微鏡の写真では、緑色のごつご つして厚いバイオフィルムが波長222nmの遠紫外線照射によって破壊され、薄く剥がれているのが観察できます。下段の走査型電子顕微鏡写真では、波長222nmの遠紫外線照射後の歯周病菌はバラバラになり死んでいることが分かります。



図1.波長222nmの遠紫外線照射による歯周病菌バイオフィルムの減少


また、ハムスターの歯周病モデルを用いた検討では、ファイバーにより波長222nmの遠紫外線を導光し(図2)、ハムスターの口腔に照射することで、有意に歯周病患部の細菌数が減少することも示しています。安全性の証明のため、これらの効果を示す10倍のエネルギーの波長222nmの遠紫外線をマウスの舌に照射していますが、肉眼的、組織学的に全く異常が現れていません。今後はさらに歯周病モデルに対する波長222nmの遠紫外線の治療効果を確認していく予定です。

歯周病は人類最多の感染症であり、ギネス記録として登録されています。それに加え、腸内環境や認知機能にも関連すると言われており、難治性の歯周病に対する治療法の開発は重要性を増しています。本研究の成果を基に、波長222nmの遠紫外線歯周病治療器の開発を目指していきます(図3)。


図2.動物試験に用いた波長222nmの遠紫外線照射の照射装置
 

図3.波長222nmの遠紫外線照射による歯周病治療の概念

【発表論文】
•タイトル:Far-ultraviolet irradiation at 222 nm destroys and sterilizes the biofilms formed by periodontitis pathogens
•著 者:Nishikawa J, Fujii T, Fukuda S, Yoneda S, Tamura Y, Shimizu Y, Yanai A, Kobayashi Y, Harada K, Kawasaki K, Mishima K, Watanabe K, Mizukami Y, Yoshiyama H, Suehiro Y, Yamasaki T, Takami T.
•掲載誌:J Microbiol Immunol Infect.
•掲載日:2024年8月8日 Volume 57, Issue 4, August 2024, Pages 533-545.
•D O I:https://doi.org/10.1016/j.jmii.2024.05.005

 
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