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波長222nm紫外線の眼に対する
安全性について

島根大学医学部附属病院様

島根大学
医学部 眼科学講座
教授 谷戸 正樹先生

島根県出雲市で地域に密着した高度医療の実践と、地域の中核病院としての医療を提供する島根大学医学部附属病院様。

2018年から当社と波長222nmの紫外線における人間の眼への影響について共同研究を進めています。今回は共同研究を行っている眼科学講座の谷戸正樹先生に、波長222nmの紫外線を活用した紫外線除菌技術「Care222®」との出会いから共同研究までの経緯、今後の展望についてお聞きしました。

紫外線が眼に与える影響を教えてください。

(谷戸先生)

紫外線は、UV-A(波長315-400nm)、UV-B(波長280-315nm)、UV-C(波長100-280nm)の3つに分けることができます。

UV-Aは波長が長く、角膜を通り過ぎ水晶体やレンズで吸収され、長時間当たると白内障の影響が出てきます。UV-Bは主に角膜で吸収され、その表面を傷つけ、眼が痛くなり涙が出たり、充血したりという急性障害が起こります。海水浴や雪山でスキーをした夜、眼の痛みや充血などが起こるのはUV-Bによるものです。一般的に紫外線による眼の障害は、UV-AやUV-Bが原因とされています。長期間当たると眼の表面で良性腫瘍の翼状片(※1)の原因になることもわかっています。

(※1)白目(結膜)の部分が黒目(角膜)の上にかぶさる病気

共同研究に至った経緯を教えてください。

(谷戸先生)

ウシオ電機さんから申し入れがあり共同研究が始まりました。もともと我々は光による眼への障害を研究していたので、どのような光がどの程度当たると、どういった障害が起こるかを評価することは、まさに専門領域です。Care222に使用される222nmという波長は、通常オゾン層で吸収され、地上にはほとんど届きません。しかしオゾン層が薄くなり人体に当たると、皮膚ガンなどの原因になると言われてきました。有人環境下でそういったランプを使用するには、皮膚にも目にも安全であるという検証が必要なのです。

共同研究の内容についてお聞かせください。

(谷戸先生)

アルビノラット(※2)の眼の角膜に波長222nmの紫外線をはじめ種々の紫外線を照射し、24時間後の急性障害の有無をフルオルセイン染色にて確かめました。従来から広く殺菌用に用いられてきた波長254 nm紫外線では、30 -150mJ/cm2に曝された角膜で表在性の点状角膜炎が発症し、600mJ/cm2では、角膜の侵食が観察されています。また、ヘマトキシリン・エオシン染色においても、波長254nm紫外線に曝された眼では、角膜上皮欠損という重度な症例が観察されました。一方で、波長222nm紫外線においては、600mJ/cm2の照射群においても、24時間後、角膜に損傷は認められませんでした。

その後、生体への悪影響が少ないことが推察されていた波長222nmの紫外線を活用したCare222®の技術を搭載した製品を実際に眼科外来に設置し、診療室で働く医療従事者の眼や皮膚に変化が生じないか、1年間の観察を行いました。その結果、急性有害事象(角膜びらん、結膜充血、眼瞼皮膚紅斑など)も、慢性有害事象(翼状片、白内障、眼瞼腫瘍など)も認められませんでした。

(※2)先天的にメラニン色素を合成することができず、変化が分かりやすいネズミ。網膜の血管が見えるため赤い眼をしている。

研究の反響を教えてください。

(谷戸先生)

どの波長の紫外線をどのくらい浴びても良いかは、JIS規格などに用いられる米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の許容限界値(TLV)が適用されてきました。これまで約50年間、眼に対する波長222nm紫外線の許容限界値については1日当たり22mJ/cm2と定められてきましたが、2022年に160mJ/cm2まで引き上げられました。これは我々とウシオ電機さんの共同研究が、50年ぶりの改訂につながった1つの要因と考えられます。

今後ウシオ電機、Care222®に期待することはありますか?

(谷戸先生)

今回、我々が評価したのは眼に対する安全性です。一方で、波長222nmの紫外線は、従来、殺菌用途として利用されてきた波長254nmの紫外線と同様に、優れた殺菌効果も有しています。波長254nmの紫外線は、殺菌効果はあるものの、人体に当たると皮膚や眼の炎症を引き起こすため、人のいる場所では使用できないことが欠点でした。この欠点を克服し、紫外線の殺菌効果を人がいる場所で発揮できるのが波長222nmの紫外線です。

眼科の場合、眼のウイルス感染症に「アデノウイルス結膜炎」、いわゆる「はやり目」がありそういったウイルスへの殺菌効果にも期待しています。引き続き、許容限界値内での殺菌効果について検証を進めて行けたらと思います。

(※2)先天的にメラニン色素を合成することができず、変化が分かりやすいネズミ。網膜の血管が見えるため赤い眼をしている。