HOME>研究開発>光学フィルタを用いた紫外線照射の安全性評価

光学フィルタを用いた紫外線照射の安全性評価

試験機関 : 米国・コロンビア大学(3次元ヒト皮膚モデルでの試験)
共同研究先 : 弘前大学大学院医学研究科(マウスでの試験)

試験結果

光学フィルタを用いた紫外線照射の安全性を示すため、光学フィルタを装着した波長222nm紫外線をピークに持つエキシマランプを用いて、3次元ヒト皮膚モデル、マウスへの紫外線照射試験を行った結果、いずれも基底層においてDNA損傷を起こした細胞は確認されませんでした。

※主にシクロブタン型ピリミジン二量体陽性細胞と呼ばれ、基底層において生じるとがん化等のリスクが高まる

■3次元ヒト皮膚モデルでの紫外線照射試験

光学フィルタを装着しない場合、紫外線照射量の増加に比例して、表皮組織におけるDNA損傷を起こした細胞の発生率が増加することを確認。一方、光学フィルタを装着した場合、500mJ/cm2の照射量においてわずかな増加を確認しましたが、表皮組織の最上部に位置しており、基底層においては確認されませんでした。

図1 DNA損傷を起こした細胞の発生率

 

図2 表皮組織におけるDNA損傷の確認

・黒く染色された細胞がDNA損傷を起こした細胞

・論文に掲載されている資料の一部を抜粋

出典:Buonanno. M, et al. Exposure of Human Skin Models to KrCl Excimer Lamps: The Impact of Optical Filtering. Photochemistry and Photobiology, (2021). https://doi.org/10.1111/php.13383

■マウスでの紫外線照射試験

光学フィルタを装着しない場合、紫外線照射量の増加に比例して、表皮組織におけるDNA損傷を起こした細胞の発生率が増加することを確認。また、300mJ/cm2の照射量において、基底層にまでDNA損傷を起こした細胞が確認されました。一方、光学フィルタを装着した場合、DNA損傷を起こした細胞の発生率は、紫外線を照射されていないマウスでの発生率と有意差はありませんでした。

図3 DNA損傷を起こした細胞の発生率

 

図4 表皮組織におけるDNA損傷の確認

・赤く染色された細胞において、黒矢印は表皮最上部、赤矢印は基底層に確認されたDNA損傷を起こした細胞

・論文に掲載されている資料の一部を抜粋

出典:Narita. K, et al. Effect of ultraviolet C emitted from KrCl excimer lamp with or without bandpass filter to mouse epidermis. PLOS ONE, (2022). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0267957

試験内容

光学フィルタを装着したエキシマランプ(主波長222nm)による紫外線照射の安全性を示すため、光学フィルタの装着あり・なしでの紫外線照射試験を3次元ヒト皮膚モデルおよびマウスに対して実施しました。 表皮組織においてDNA損傷を起こした細胞(主にシクロブタン型ピリミジン二量体陽性細胞)の発生率を統計的に確認。同時に、DNA損傷を起こした細胞の位置を観察することで、表皮組織における紫外線の到達深度を確認しました。

■3次元ヒト皮膚モデル
ヒトの表皮と真皮を再現した3次元ヒト皮膚モデルに対して、光学フィルタの装着あり・なしの条件のもと、照射量23、50、100、150、500 mJ/cm2を照射するグループと非照射に分け、それぞれのグループにおいてDNA損傷細胞の発生率を統計的に比較。また、皮膚の断面図からDNA損傷細胞の発生位置を観察しました。

■マウス
ヘアレスマウスを光学フィルタの装着あり・なしの条件のもと、照射量150、300 mJ/cm2照射したグループと非照射グループに分け、それぞれのグループと非照射において、DNA損傷細胞の発生率を統計的に比較。また、皮膚の断面図からDNA損傷細胞の発生位置を観察しました。

試験機関・共同研究先

■試験機関
米国・コロンビア大学 : 3次元ヒト皮膚モデルでの試験

■共同研究先
弘前大学大学院医学研究科 : マウスでの試験

用語解説

■光学フィルタ

波長222nmをピークに持つエキシマランプと組み合わせることで、ヒトに悪影響を及ぼす230nm以上の波長をカットする特殊なフィルタ。

■シクロブタン型ピリミジン二量体陽性細胞

紫外線によりDNA損傷を起こした細胞。

■ヘアレスマウス

皮膚の研究に適したマウス。

■皮膚の構造